ゲノム検査室
ゲノム検査室の新着情報
診療スタッフ
室長 北澤 淳一(きたざわ じゅんいち)
【新興感染症対策推進監、医療の質向上統括調整監、臨床検査部長、ゲノム医療部長、ゲノム検査室長、中央採血部長、感染管理室長】
- 卒業年/昭和63年
- 資格など/臨床遺伝専門医、臨床検査専門医、臨床検査管理医、日本輸血・細胞治療学会認定医・評議員、血液専門医・指導医、小児科専門医、認定小児科指導医、日本感染症学会推薦感染制御医師(ICD)、日本医師会認定産業医、診療情報管理士
- 得意分野/臨床遺伝学、臨床検査医学、輸血学、遺伝医学、血液疾患、小児科全般、感染管理、診療情報管理
スタッフ構成
- 臨床医:1名
- 臨床検査技師:2名
- 非常勤事務員:1名
検査項目
I.UDPグルクロン酸転移酵素遺伝子多型(UGT1A1)
UGT1A1は、抗がん剤イリノテカンの代謝に関与する代謝酵素です。UGT1A1遺伝子の多型の中の数種類の遺伝子には、抗がん剤イリノテカンの代謝が著明に低下することで骨髄抑制や下痢などの重篤な副作用の発生頻度が高いことが明らかになっています。
イリノテカン投与対象となる患者さんのUGT1A1遺伝子多型を測定し、イリノテカン投与後の副作用発現の危険性を予測します。
II.造血器腫瘍遺伝子検査
造血器腫瘍遺伝子検査とは、骨髄増殖性腫瘍(真性赤血球増多症、本態性血小板血症、原発性骨髄繊維症他)の診断に有用な検査です。JAK2遺伝子、MPL遺伝子、CALR遺伝子の変異有無を同時に確認する検査として、スクリーニングや診断補助に有用です。
Ⅲ.マイクロサテライト不安定性(MSI)検査
ヒトの体の細胞は常に分裂を繰り返しています。その時にDNAの配列に間違い(ミスマッチ)が起こることがあり、それはがんの発生と大きく関わっています。このミスマッチの修復を行っているMMRタンパク質が何らかの原因で働けなくなると、DNAの配列内のマイクロサテライトと呼ばれる領域にミスマッチが蓄積して不安定になり、DNA修復が正確に行われていない状態となります。
一方、MMRタンパク質の働きが正常であれば、ミスマッチは修復され、マイクロサテライト領域は安定化します。MSI検査とは、がん部分と正常部分のマイクロサテライト領域を比較することで、修復機構の機能低下があるかどうかを確認するための検査です。
MSI検査はリンチ症候群の診断補助や免疫チェックポイント阻害薬の適応判定の補助、大腸癌における化学療法の選択の補助のために使用されます。
Ⅳ.オンコマインDx Target Test マルチ CDx システム
「オンコマインDx Target Test マルチ CDx システム」は遺伝子パネルを用いた次世代シークエンス技術(NGS)によるコンパニオン診断システム*です。
下表の医薬品の適応判定の補助を目的として、対応する遺伝子変異等を検出します。
*コンパニオン診断:特定の医薬品(分子標的薬)が標的とする異常なたんぱく質は遺伝子変異によって作られるため、がん細胞の中に対応する遺伝子変異があるかどうかを調べる検査。
がん種 | 対象遺伝子変異等 | 関連する分子標的薬 |
---|---|---|
非小細胞肺癌 | BRAF V600E変異 | ダブラフェニブメシル酸塩及びトラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物 |
EGFR遺伝子変異 | ゲフィチニブ、エルロチニブ塩酸塩、アファチニブマレイン酸塩、オシメルチニブメシル酸塩、ダコミチニブ水和物 | |
HER2(ERBB2)遺伝子変異 | トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え) | |
ALK融合遺伝子 | クリゾチニブ、アレクチニブ塩酸塩、ブリグチニブ、ロルラチニブ | |
ROS1融合遺伝子 | クリゾチニブ、エヌトレクチニブ | |
RET融合遺伝子 | セルペルカチニブ | |
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異 | カプマチニブ塩酸塩水和物、テポチニブ塩酸塩水和物 | |
甲状腺癌 | BRAF V600E変異 | エンコラフェニブ及びビニメチニブ |
RET融合遺伝子 | セルペルカチニブ | |
甲状腺髄様癌 | RET遺伝子変異 | セルベルカチニブ |
Ⅴ.オンコマイン フォーカス アッセイ
本検査は、次世代シーケンシング(NGS)技術により、固形腫瘍に関連する固形がんドライバー遺伝子として選択された52遺伝子中の数百におよぶ遺伝子変異を同時に検出し、承認済みの治療薬や治験に関する情報を提供します。なお、本検査は全工程を院内で一貫して行います。
2017年に保険適用となったがんゲノムプロファイリング検査では、対象となる患者さんが限られています。本検査は自由診療として行われ保険適用はありませんが、保険適用のがんゲノムプロファイリング検査の対象とならない標準治療終了前の患者さんでも、腫瘍組織があれば検査を受けることができます。
この検査結果をもとに保険適用薬を使用したりすることはできませんが、特定の医薬品の使用等の治療方針の決定に有用な情報となったり、将来の治験の適格性の事前把握により治験へのアクセスが円滑になること等が期待できます。
臨床遺伝科 がん遺伝子パネル検査 「オンコマイン™ フォーカス アッセイ システム(OFA)」