青森県立中央病院では、地域の医療機関に医師を派遣し、地域医療に従事しています。地域医療支援部の活動は、医師を派遣し地域で医療に従事するだけでなく、派遣された地域で医療の発展や推進を目指し尽力することも役割の一つです。
今回は、地域医療の現状調査の一環で、11月19~20日に行った下北地区の医療機関ヒアリングの様子を紹介します。ヒアリングでは、各地域の医療の現状について意見交換し、医療連携の重要性について確認しました。
六カ所村地域家庭医療センター
(右から、船越医師、松岡センター長、地域医療支援部 丸山部長、県医療薬務課 小川特別医療顧問、県病院局 木浪主事)
松岡センター長から
今回のヒアリングでは、小川先生、丸山先生と、わずかな時間でしたが県内自治医大卒業生の活躍や課題などについてお話ができました。
この地域では、地域医療振興協会の管理委託施設として人口約1万人の医療を幅広く担っています。
日本原燃という巨大企業があり高齢化率は27%と低く、救急から在宅医療、地域ケア、海外研究者の診療まで多様性の中で日々奮闘中です。
願わくは、自治医大の後輩たちと地域医療、プライマリ・ケアの経験や方法を共有したいと思っています。ちなみに、ウニやイカ、ヒラメそして長芋焼酎(六趣)は絶品ですよ!
東通村診療所
(左から2番目が東通村診療所 川原田所長)
川原田所長から
【それぞれの地域の医療の現状と問題点】
長期的な課題としては特に郡部での人口減少に対応した地域医療のあり方など問題山積していますが、コロナ禍で地域医療の感染対策の問題点が明らかになったと思います。
医師数の少なさ以外にも感染症病床の少なさ(当初はむつ総合病院に4床のみ)や感染症専門医がいない、PCR検査センターがないことなどソフト面、ハード面での問題も浮き彫りになりました。
【青森県や県病地域医療支援部に期待すること】
包括ケアや総合診療を行っている者としては、今回のコロナ禍で保健所と普段の情報交換が少なく、包括ケアを謳っている割には「普段から顔の見える関係」が貧弱だと感じました。
県にはICTなどの利用による保健・医療関係者との情報交換の場の設定をお願いしたいと考えています。
また、コロナ禍でも総合診療の役割は大きく、県内での総合診療専門医の養成は非常に大事ではありますが、県内では総合診療の専攻医は少ないのが現状です。
他県の例で複数のプログラムを一本化し専攻医が増加したと聞いています。本県においても複数のプログラムを一本化し、内容や指導医の充実を図ることもご検討いただければ幸いです。
大間町で活動している社会福祉士 納谷むつみさん
(左から2番目)
納谷さんとは、地域医療支援員の活動について、意見交換をしました。
※地域医療支援員とは、医療における地域のキーパーソンのことです。シンポジウムや医師との交流会などの活動を通し、地域づくりの一端を担う役割があります。
納谷さんから
テーマ:地域医療支援員になってやりたいこと
コミュニケーションは相互作用です。住民と、病院の皆さんと、関係する多職種の皆さんとの間で、エネルギーがぐるぐるぐるぐる循環するようなきっかけ作りができればいいなーと思っています。お互いが片思いだと思ってモジモジしているかもしれませんが、実は思い合っているということがわかれば幸せになれる、と自分の経験から実感しているからです。楽しみです。
地域医療支援部 丸山先生から
新型コロナウイルス感染症の流行状況次第ではオンラインでヒアリングを行う予定でしたが、運良く流行が落ち着き、一昨年、昨年に続き下北に訪問することができました。
皆さんご存知かもしれませんが、六ヶ所村も東通村も地域包括ケアに関しては日本の最先端を行く地域で、その中心的な役割を担っている松岡先生や船越先生そして川原田先生と様々なお話ができることは、地域医療支援を行う上で非常に役に立ち青森県内に地域包括ケアを広めるモチベーションとなっております。
また大間の納谷さんとは、私が大間病院にいた時に一緒に地域医療研究会の活動をさせていただき、この活動をもとに県病院局地域医療支援員制度をつくる予定です。納谷さんの行動力や明るさには見ならうことが多く、今回も元気をもらって帰ってきました。
納谷さんには初の地域医療支援員になっていただき、また一緒に活動したいと考えております。
最後にお忙しい中、貴重なお時間をつくっていただいた松岡先生、船越先生、川原田先生、納谷さんに感謝いたします。そして来年も是非、お邪魔したいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。
今後も地域医療支援部の活動を発信しますので、「より良い地域医療のために」ご協力をよろしくお願いします。