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総合周産期センター母体・胎児集中治療管理部研修内容(MFICU) -臨床研修- 

総合周産期母子医療センター母体・胎児集中治療管理部

Ⅰ.特徴

産科(周産期)の特徴は、重症の切迫早産や胎児疾患などの高度周産期医療はもちろんの事、正常妊娠分娩も多数扱っております。特に、産科病棟は、MFICU、後方病床に個室を多く設置しプライバシーへの配慮を行い、分娩は落ち着いた雰囲気のLDR(陣痛から産後までを個室)において、夫立ち会い分娩も薦めております。産後は母児同室、完全母乳保育を勧めております。
 
分娩数は、ここ約3年間で年間400から500件まで増加しております。正常妊娠では極力自然分娩を行いますが、年間150例近いハイリスク症例の帝王切開もあり、超緊急帝王切開術などの産科救急に対応する事が可能です。
 
医療の分野の中でも、特に産婦人科診療は、社会医学的な側面も多々含まれており、特に女性・生殖器・出産という分野でのプライバシーの保護を理解し、妊娠・分娩・子育てという家庭・社会との連携や、地域保健などのフィールド分野との関わりの重要性も理解する事が望まれます。また産科診療には母体保護法に則った診療や届け出、出産届や死産届、あるいは婚姻届など医療と法律・法制度などを十分に理解して診療に当たる必要があります。
 
産婦人科を目指す医師は、医学だけの研鑽ではなく、全人的な研鑽が求められます。
産婦人科に限らず、昨今では医療事故に対しての取り組みを積極的に行う姿勢が望まれており、自らの能力を熟知し診療にあたること、事故を未然に防ぐための努力をする必要があります。また、インシデントやアクシデントを隠蔽せずに申告する事が、それ以後事故を防止するために非常に重要であることが知られており、特に医療事故が多いとされる産婦人科分野においては、他科での研修以上にそのような姿勢が必要です。
 
周産期センターは、当直制で、後期臨床研修医も当直ローテーション体制に含まれる事になります。後期研修医が当直の場合には、必ず指導医がセカンドコールになることで、当直時の指導体制も万全を期しています。
 
また周産期センターでは、生後の新生児管理を新生児科医が行っていますが、毎月2回、合同カンファレンスを行い、それぞれの入院症例についての症例カンファレンスを行い、出生前から出生後までの一貫した治療方針で母体・胎児・新生児治療を行えるようになっております。また病児や低出生体重児で出生が予定される症例では、新生児科医、臨床心理士などが、分娩前に母体や夫・家族と面接を行い、母体の不安を極力軽減するようなプレネイタルビジットを行っている事も特記すべき点として挙げられます。
 

Ⅱ.研修内容と研修目標

 
1.総論
 
基本的に、産科分野と婦人科分野は、日本産科婦人科学会の専門医研修の指定する全領域を含みます。さらに、当院での独自のプログラムを追加した周産期分野での研修内容は、日本周産期新生児学会専門医制度における研修目標を基本として研修する。研修項目については、下記各論に示します。
 
2.一般目標 各論
 
(1)後期臨床研修前半(後期臨床研修1年次~2年次の約2年間)
 

妊娠分娩産褥ならびに胎児新生児の医療に必要な基本的知識を習得する。
また育児や母性についての特殊性を理解する。

 

1)母児の生理を理解することができること。(成人女性と妊娠女性の検査結果評価の違いなど)

2)妊娠中の基本的な症状等のプライマリーケアや指導を行えること。

3)産科的内診と外診の手技を行えること。

4)基本的産科超音波検査による胎児健診を行えること。

5)胎児心拍モニタリング等の非侵襲的胎児診断や手技について行えること。

6)上級指導医の下で侵襲的胎児診断の手技について助手をできること。

7)一人で正常妊娠および産褥の健診を行えること。

8)一人で正常分娩から産褥までを取り扱うことが出来ること。(会陰切開と縫合)

9)上級医指導の下、基本的産科疾患患者の担当医をつとめることが出来る。

10)各種合併症妊娠の管理と治療に関する基礎的な知識を習得できること。

11)各種異常妊娠についての診断と治療法を理解できること。

12)各種胎児異常についての診断と治療法を理解できること。

13)異常分娩の管理と処置について理解できること。

14)産科手術の適応と要約を理解できること。(帝王切開術、吸引鉗子、骨盤位)

15)満期の選択的帝王切開術と流産手術の執刀術者を行えるようになること。

16)産褥異常の管理と処置を理解できること。

17)産科感染症について管理と処置が出来ること。

18)分娩誘発(器械的頸管開大、陣痛促進剤の使用)を施行管理できること。

19)産科麻酔法について理解できること。

20)新生児の診察や基本的な検査を施行できること。

21)上級医の指導の下、救急を含めて、初診患者の診察を行えること。

22)妊娠中の投薬について、理解、指導できること。

23)多胎妊娠に関しての基礎的な知識を習得し、多胎妊娠の管理方針について、理解できること。

24)産科的術前・術後管理ができること。

25)母体救急特に分娩時の出血性ショックに対しての適切な対処ができること。

26)新生児蘇生の基礎的な技術を習得すること。(新生児蘇生プログラム、臍帯血液ガス採取)

27)母体保護法に則った手術について理解し、法制度の関わりについて理解すること。

 
(2)後期臨床研修後半(後期臨床研修3年次の約1年間)
 

各自の専門性の希望において、周産期専門医を目指す場合には、根幹的細分化専門医取得のうち、平成18年度から開始となる日本周産期新生児学会専門医制度の研修項目に準じた研修内容での研修を行います。細分化専門医として、周産期分野以外の分野を取得する場合には、周産期分野のうち研修前半の目標を更に深く確実に研鑽して頂きます。また、臨床研修のみではなく、専門医としての研究を行い、また学会や論文発表を行います。

 

周産期分野の母体胎児専門医の研修症例の目標としては、以下のような症例のうち20症例以上の経験が望まれる。(後期研修前半で経験していない疾患については、後半で経験すべきである。また前半で経験した疾患も、常にアップデートな知識を習得し、より深い理解をできるよう研鑽する)

 
 

1合併症妊娠症例 子宮筋腫・卵巣腫瘍合併妊娠、子宮頚癌合併妊娠、心疾患、高血圧症、不整脈等の
循環器疾患合併妊娠、貧血、特発性血小板減少性紫斑病、白血病等の血液疾患
合併妊娠、慢性腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群、膀胱炎などの泌尿器疾患
合併妊娠、気管支喘息、肺結核、肺血栓などの呼吸器疾患合併妊娠、糖尿病、
甲状腺機能異常などの内分泌代謝疾患合併妊娠、クローン病、潰瘍性大腸炎、
虫垂炎、腸閉塞など消化器疾患合併妊娠、全身性エリテマトーデスなどの
自己免疫性疾患合併妊娠、統合失調症、てんかん、そううつ病、パニック症候群
などの精神神経疾患合併妊娠
2異常妊娠症例 重症妊娠悪阻、流産、胞状奇胎、切迫早産、早産、前期破水、妊娠高血圧症候群、
子癇、HELLP症候群、常位胎盤早期剥離、前置胎盤、低置胎盤、羊水過多症、
羊水過少症、多胎妊娠、血液型不適合妊娠、過期産、血栓症
3胎児異常症例 染色体異常、遺伝子病、胎児病、胎児発育不全、溶血性疾患、
胎児水腫、子宮内胎児死亡、双胎間輸血症候群
4異常分娩症例 微弱陣痛と過強陣痛、児頭骨盤不均衡、軟産道強靱(頸管熟化不全)、狭骨盤、
胎位・胎勢異常、回旋異常、侵入異常、多胎分娩、遷延分娩、分娩停止、前期破水、
子宮破裂、子宮内反症、頚管裂傷、会陰裂傷、恥骨結合離開、臍帯異常(下垂・
脱出)、癒着胎盤、胎盤梗塞、分娩時異常出血、産科ショック、過換気症候群
5産褥異常症例 子宮復古不全、産褥出血、産褥熱、静脈血栓症、肺塞栓症、乳汁分泌不全、
乳腺症、産褥精神障害
6産科感染症症例 子宮内感染症(羊膜絨毛膜炎、産褥子宮内膜炎)、子宮頚管炎、腟炎、
母子感染症(TORCH症候群、B型肝炎、C型肝炎、パルボウイルス感染など)、
乳腺炎、尿路感染、性感染症
7新生児症例 健常新生児、病的新生児、新生児搬送、新生児黄疸など
8出生前診断症例 遺伝カウンセリング、羊水診断、胎児肺成熟度検査、胎児胎内感染診断、
胎児形態異常診断(USG、MRI,3D-CT)

 

Ⅲ.研修の方略

 
医師過剰が叫ばれる昨今ですが、産科診療を行う医師数はとくに地方で減少しており、また他科に比べ高齢化も進んでいます。不妊治療を行う施設数の増加と相反して、全国的な出生率の低下と出生数の低下のため分娩数は減少していますが、リスクの高い症例が増えていることから医師一人にかかる負担は増えています。
 
産婦人科医療に従事することは、生命の誕生に立ち会い、手助けをすることであり、多くの尊い臨床経験ができます。また、産婦人科の特徴は、内科的な立場でも外科的な立場でも、臨床的視野を備えた医師が必要とされる科です。また、診断から治療まで、ほぼ全ての領域を単一科で扱う科です。しかも、産科は、合併症妊娠や、胎児合併症の理解など、頭の先からつま先まで、全科的な知識を要求される科です。さらに、最近特に言われる、ジェンダースペシフィックメディシン(性差に基づいた医学)の基礎的な分野の1つとして、産婦人科は注目されています。また生殖医療の技術は、医学の進歩にとっては欠かせない技術になる事が予想されます。
 
産科を選択する若い医師は、我々の将来を担うべき新しい命を育てる職業であるという自負を持って仕事ができます。現在、世界的にも周産期分野の最先端の医療(胎児治療)の牽引力となっているのは、まさしく医師になって10年前後の若い医師です。

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